作品紹介
母が嫌いだった。それでも今は寂しい。
⽇本海沿いの町に暮らす少年、⼤地は、幼少期に暴君のようだった⽗の影響から⾔葉を発しない。今は⺟の亜樹と暮らしているが、夜の仕事で⽣計を⽴てざるを得ない亜樹はほとんど家に帰らず、⽣活は苦しい。やがて亜樹と共に叔⺟の家に⾝を寄せるが、どこにも居場所はなく、ひとりで過ごしては内気になっていった。⼤地は⽗の⾏⽅を求めて⽣家を訪ねることを決意。これを境に、彼の運命は⼤きく揺らいでいくーーー。⼼のよるべなき貧困、誰にも⾒つからぬように⽣きる孤独の中のささやかな救い、⺟への複雑な感情。流されるままに⽣きているようで、歩みを⽌めない⼤地。そんな彼がかすかな光を⼿繰り寄せ、息をのむような⼤きな愛を知るまでの20年間が、少年の姿を追い続け、リアリズムに根ざした視点で綴られていく。